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芽依菜の言葉を聞いた康介の眉が、ほんの少し上がった。
それに気が付かず、芽依菜は水を飲む。冷たくて、喉を潤す美味しい水だと、思う。
「……友人に、恋人がいるんです」
ボソッと、芽依菜の口からそんな言葉が零れた。
「彼女、すっごく楽しそうで、幸せそうで。……結婚も視野に入れた交際って、どんなんだろって」
誤魔化すように、今度はお酒を口に入れる。美味しくて、もっと飲みたいと思う。けど、なんだか今日は普段よりもアルコールの回りが早いような気がした。
普段ならば、ここまで酔わないだろうに。
「なんでしょうね、人肌恋しいっていうんでしょうか。……夏目さんは、そういうときありませんか?」
ちらりと彼に視線を向けて、そう問いかけてみる。彼はごくりと息を呑んで、口元を緩める。
艶めかしくて、視線が離せなかった。
「まぁ、あるんじゃないですかね」
「ですよね」
肩をすくめて、芽依菜はそう言う。人肌恋しいときは、誰にだってあるはずだ。
たとえ、女性に苦労していないであろう彼だったとしても。誰も捕まらない夜は、あるはずで。
そう思って、芽依菜は笑う。彼と自分はそもそも住む世界が違う。……だったら、ここで。
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