第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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(一夜の関係っていうのも、ありなのかも)  そんな邪な感情が芽生えて、芽依菜はカウンターの上にある康介の手に、自身の手を重ねた。彼が驚いたように目を見開くのが、わかる。 「夏目さんって、来る者拒まず、なんですよね」  芽依菜のその問いかけに、彼は何も言わなかった。図星なのか。はたまた――でたらめなのか。  でも、芽依菜は思うのだ。ここまで容姿の整った彼が、女性に苦労しているわけがないと。 「来る者拒まず、去る者追わずだって、女性社員が噂してました」 「……ふぅん」 「……どうです、今日? 私と、一夜共にしてみませんか?」  口が滑るというのは、多分こういうことを表す言葉なのだろう。なんて、芽依菜の思考回路の冷静な部分がそう言う。  彼の手に重ねた自分の手に、力を入れる。上目遣いになって彼を見つめてみる。彼が、ごくりと息を呑んだのがわかった。 「けど、男性経験ないんでしょう? 俺みたいなのに、ハジメテ捧げちゃっていいんですか?」 「いいですよ。……むしろ、私のハジメテ、処女、もらってくれませんか?」  唇を歪めて、艶めかしく笑ってやった。その瞬間、康介が自身の手の上に載った芽依菜の手を、どける。  かと思えば、そのまま今度は握られた。がっちりと、逃げられないように。指を絡められる。
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