第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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「へぇ、じゃあ、その誘い、乗りましょうか」  彼がはっきりとそんな言葉を口にした。その言葉を聞いた芽依菜は、ふっと口元を緩める。 「この後、何処に行きます?」 「適当なラブホにでも、連れて行ってくださいよ」  それとも、彼ほどの御曹司になると、適当なラブホでは済ませないのか。  心の中に浮かぶその疑問を口にすることはなかった。康介の顔が近づいて来て――芽依菜の唇の端に、かすめるようなキスを落とす。 「わかりました。……じゃあ、もう少し飲んだら移動しましょうか」 「はい」  どちらともなく、笑い合う。 (人肌恋しいだけ。これは一夜の関係。本当に、それだけなのよ)  芽依菜が康介に惹かれることはないように、康介も芽依菜に惹かれることはないだろうから。  ただ、それだけ。二人の間には、ワンナイト以外の感情は、芽生えない。
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