第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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 ぼうっとしているのは、アルコールの所為なのか。はたまた、淫靡な空気にやられてしまったのか。それは、定かじゃない。  てきぱきと動く康介を見て、芽依菜は思う。……やっぱり、彼は慣れているのだと。 (やっぱり、夏目さんにお願いしてよかった)  心の中でそう思って、芽依菜は一室に足を踏み入れる。  ガチャリと扉が閉まる音が、やたらと生々しい。まるで、耳を犯されているみたいだ。 「な、つめ、さん――」  彼の顔を、見上げる。  瞬間、芽依菜の身体が力強く引き寄せられた。気が付けば、康介の腕の中にいたのだから、驚きを隠せない。 「……芽依菜さんって、呼んでも?」  彼が芽依菜の耳元に唇を寄せて、さも当然のようにそう囁く。……色気を醸し出す声に抗えず、芽依菜はこくんと首を縦に振った。 「じゃあ、芽依菜さん」 「んんっ」  康介の手が、芽依菜の背中をなぞった。ゾクゾクとしたなにかが身体中を這いまわって、彼の身体に身を預ける。 「酔ってます?」 「……すこ、し」  問いかけに、震える声で答える。そうすれば、彼が唇を緩めたのがわかった。その動きだけで、頭の奥がくらくらとする。
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