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ぼうっとしているのは、アルコールの所為なのか。はたまた、淫靡な空気にやられてしまったのか。それは、定かじゃない。
てきぱきと動く康介を見て、芽依菜は思う。……やっぱり、彼は慣れているのだと。
(やっぱり、夏目さんにお願いしてよかった)
心の中でそう思って、芽依菜は一室に足を踏み入れる。
ガチャリと扉が閉まる音が、やたらと生々しい。まるで、耳を犯されているみたいだ。
「な、つめ、さん――」
彼の顔を、見上げる。
瞬間、芽依菜の身体が力強く引き寄せられた。気が付けば、康介の腕の中にいたのだから、驚きを隠せない。
「……芽依菜さんって、呼んでも?」
彼が芽依菜の耳元に唇を寄せて、さも当然のようにそう囁く。……色気を醸し出す声に抗えず、芽依菜はこくんと首を縦に振った。
「じゃあ、芽依菜さん」
「んんっ」
康介の手が、芽依菜の背中をなぞった。ゾクゾクとしたなにかが身体中を這いまわって、彼の身体に身を預ける。
「酔ってます?」
「……すこ、し」
問いかけに、震える声で答える。そうすれば、彼が唇を緩めたのがわかった。その動きだけで、頭の奥がくらくらとする。
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