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一瞬下げた視線をもう一度上げる。康介とばっちりと目が合って、彼が芽依菜の身体を横抱きにした。
「ちょ、歩けますからっ!」
慌てて暴れるものの、彼は見た目よりもがっしりとしているらしい。芽依菜の抵抗などどこ吹く風で、大きなベッドまで歩いていく。
「こういうときは、甘えてくれたほうが、いいかも」
合わせ、彼がそういうものだから。芽依菜は抵抗を止める。ただ、控えめに彼の衣服を掴んだ。
しわにならない程度に掴んで、ぎゅっと目も瞑る。どくん、どくんとひときわ大きく心臓が音を立てた。
「可愛い」
彼が、芽依菜にそう囁いてくる。冗談じゃないと、思う。
だけど、口からはそんな言葉が出てこない。ただぎゅっと、康介の衣服を握って抗議を示した。
「……っはぁ、可愛い」
頭の上から、艶めかしい声が降ってくる。恐る恐る彼の顔を見つめる。……彼の目は、驚くほどに欲情の色を宿していた。
「……っ」
急いで視線を逸らす。
このまま見つめ続けていたら、色香にやられてしまうだろう。そんな、危機感が頭の中に芽生えていた。
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