第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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 一瞬下げた視線をもう一度上げる。康介とばっちりと目が合って、彼が芽依菜の身体を横抱きにした。 「ちょ、歩けますからっ!」  慌てて暴れるものの、彼は見た目よりもがっしりとしているらしい。芽依菜の抵抗などどこ吹く風で、大きなベッドまで歩いていく。 「こういうときは、甘えてくれたほうが、いいかも」  合わせ、彼がそういうものだから。芽依菜は抵抗を止める。ただ、控えめに彼の衣服を掴んだ。  しわにならない程度に掴んで、ぎゅっと目も瞑る。どくん、どくんとひときわ大きく心臓が音を立てた。 「可愛い」  彼が、芽依菜にそう囁いてくる。冗談じゃないと、思う。  だけど、口からはそんな言葉が出てこない。ただぎゅっと、康介の衣服を握って抗議を示した。 「……っはぁ、可愛い」  頭の上から、艶めかしい声が降ってくる。恐る恐る彼の顔を見つめる。……彼の目は、驚くほどに欲情の色を宿していた。 「……っ」  急いで視線を逸らす。  このまま見つめ続けていたら、色香にやられてしまうだろう。そんな、危機感が頭の中に芽生えていた。
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