第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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 そっと目を閉じて、彼の舌に集中する。口腔内を舐め上げられるのは、何とも言えない感触だった。そもそも、自分のものではない舌が口内にあるというのが、不思議な感覚なのだ。 (んっ)  舌の付け根を弄られて、芽依菜の身体が跳ねた。  酸欠からなのか頭がくらくらとして、康介の衣服に縋る。ぎゅっと握った彼の衣服がしわになることなんて、考えられなかった。  口元からくちゅくちゅと水音が聞こえてくる。ぼうっとしてしまって、もう彼に身を任せることしか考えられなくて。  注がれた唾液も、何のためらいもなく呑み込んで。離れていく彼の顔に、ほんの少しの寂しささえ覚えてしまう。 「……夏目、さん」  ぼうっとする頭で、康介のことを呼ぶ。  彼が、息を呑んだのがわかった。でも、すぐに真剣な面持ちになる。 「名前で、呼んで」 「……康介、さん」  多分、彼はこういう場では女性に名前で呼ばせるのだろう。  冷静なのに回っていない頭でそう思って、芽依菜は自然と彼の名前を口にする。 「そう、それでいい」  囁くようにそう言われて、彼の唇が芽依菜の耳元に近づく。そして、耳朶を甘噛みされた。 「んんっ」  思わず声が漏れる。
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