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そっと目を閉じて、彼の舌に集中する。口腔内を舐め上げられるのは、何とも言えない感触だった。そもそも、自分のものではない舌が口内にあるというのが、不思議な感覚なのだ。
(んっ)
舌の付け根を弄られて、芽依菜の身体が跳ねた。
酸欠からなのか頭がくらくらとして、康介の衣服に縋る。ぎゅっと握った彼の衣服がしわになることなんて、考えられなかった。
口元からくちゅくちゅと水音が聞こえてくる。ぼうっとしてしまって、もう彼に身を任せることしか考えられなくて。
注がれた唾液も、何のためらいもなく呑み込んで。離れていく彼の顔に、ほんの少しの寂しささえ覚えてしまう。
「……夏目、さん」
ぼうっとする頭で、康介のことを呼ぶ。
彼が、息を呑んだのがわかった。でも、すぐに真剣な面持ちになる。
「名前で、呼んで」
「……康介、さん」
多分、彼はこういう場では女性に名前で呼ばせるのだろう。
冷静なのに回っていない頭でそう思って、芽依菜は自然と彼の名前を口にする。
「そう、それでいい」
囁くようにそう言われて、彼の唇が芽依菜の耳元に近づく。そして、耳朶を甘噛みされた。
「んんっ」
思わず声が漏れる。
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