第1章 会社の御曹司に「処女を貰ってください」と言ってみたら

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 ……あぁ、またあれか。  芽依菜は咄嗟に、そう思った。 「それでね! 誠人(まこと)君なんだけれどぉ~」 「それ、今日何回目だっけ?」 「えっ、覚えてないけど?」  さも当然のようにそう言う郁に、芽依菜は呆れてしまいそうだった。  誠人というのは、郁の彼氏……というか、未来の夫である。現在は婚約中であり、ちょうど一年後に結婚式を挙げる予定となっていた。 「今日芽依菜とここに行くって言ったら、すっごく羨ましがってた!」 「……じゃあ、彼氏さんと来ればよかったじゃない」  店内には郁の言う通りカップルが多くいる。別に、芽依菜を誘う意味などなかっただろう。 「だって、芽依菜甘いもの好きじゃない。……だから、芽依菜と来たかったの!」 「……あっそう」  そう言われたら、もうなんと言えばいいかがわからない。  その一心で、芽依菜は俯く。……そのとき、芽依菜のスマホが震えた。  だからこそ、芽依菜はスマホを見つめる。そして、ディスプレイに映った名前に眉をひそめた。
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