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ISEKAI転成
新井六虹は気が付いた時、16進数の英数字が背景に流れる他、何も無い空間にいた。
(ああ、やはり俺は死んだのか)
脳裏をよぎるトラックとの激突の瞬間。
その時、六虹はいつになく浮かれていた。
幼馴染みの少女と交際することになった、その帰り道でのことだ。
幼馴染みとトラックによって、文字通り舞い上がってしまったのだった。
(ここは死後の世界なのか……?)
六虹は辺りを見渡したが何もなかった。
その時、何処からとも無く声がした。
「いいえ。ここは死後の世界ではありませんよ」
その声に六虹は驚いたが、それも一瞬のことだった。
「誰かと思いましたがこのタイミング、神様以外にはいませんよね。これが噂の異世界転生ってやつですか」
すると流れる英数字がぼんやりと人の形を成して現れた。
「話が早くて驚きました。ですが少し違います。むしろ私達の創造主が貴方がたなのですから。私はそんな貴方がたの創造物の中で、人知れず王と呼ばれる存在です」
その物言いは妙に機械がかっていた。
「?」
六虹は一度だけ首を傾げたが、特に気にした様子なく聞き返した。
「神様か王様かの違いに何の意味があるのか俺には解りませんが、とにかくこれが異世界転生であることに間違いは無いんですよね?」
「強いて申し上げるならば、転生、成らぬ転成と言うべきなのかも知れませんが……どうやら貴方は細かいことに囚われないご様子」
「テンプレと大きな違いが無ければですけれど……」
「流石の一言と申し上げます」
「それで、俺がこれから転生するのは一体どんな世界なんですか? チート能力は?」
「チート能力がお望みですね、かしこまりました。それからどんな世界かということですが、まさに今、それを尋ねてからデザインしようと考えていたところです」
「もしかして、俺が決めてもいいんですか?」
「もちろんです。ある程度の下地は用意しておりますが、オーダーメイドの世界観を用意いたします」
「それ、さいこう!」
六虹は喜々として飛び上がった。
「なら、とりま剣と魔法のファンタジーな世界観がいいな。もちろんゴブリンとかドラゴンなんかもいたりして……獣人族に魔族、エルフなんかも捨て難い」
「なるほど、それでしたら既存パッケージのアドオンで対応可能です」
「それは有り難い! できれば世界はリアルで綺麗な感じが良いです。それでいて天空都市に海上都市、海底都市なんかの非現実的な都市もあって、人々は穏やかに楽しく暮らすんです。それでも冒険者ギルドなんかで魔物討伐等の依頼をこなす人達もいて……」
「それは素敵ですね。ぜひそのように」
「俺自身はどんな身分、姿形で転生するんですか?」
「お望みのままに」
「なら、イケメンで足は長い感じで。身分は何でもいいかな。でもまず初めは冒険者やってみたいから王族とかは無しで」
「おやすい御用です」
「他には……ま、それくらいにしておこうかな。楽しみは自分で探さないと」
「かしこまりました。それでは、この世界についての説明は如何なさいますか?」
「大丈夫です。問題も無難に乗り越えられるチート能力があれば、後は自分で」
「頼もしい限りです。では、このあと何かご不明点等がありましたら、目覚めた後、そばにいるアイリスという者にお尋ね下さい。きっと貴方の力になってくれるでしょう」
「ありがとうございます」
「それから、もしもその者から私のことを聞かれましたら、旅に出たとでもお伝え頂ければ幸いです」
「解りました」
「ありがとうございます……では、転生前に確認しておくことはこれくらいでよろしかったでしょうか?」
「そうですね」
「承知しました。それでは後は自由に、心ゆくままに新しい世界をお楽しみ下さい」
そしてその王の姿は次第に薄くなりながら、丁寧に一礼をしつつ言った。
「Imaginary Space of Earth Kingdom for AI。通称、異世界へようこそ」
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