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「……私は、あの場所から離れて。こうしてココさんと……心さんと居られる事が凄く幸せです」
俺だってそうだ、タマと……千奈と過ごせる時間を手に入れられた事が何より嬉しい。
「だから、この後もあの人達からのコンタクトに脅えて、ココさんとの時間が乱されるのは嫌なんです。……貴方に集中したい」
正直な所、親父さん達が居なければキスしてた。
俺に集中したいなんて、すげぇ殺し文句だろ。
「そっか、タマはこれでもういいのか?タマが受けた痛みの、欠片も返せてないぞ?」
親に話したのでさえ、アイツは薄々勘づかれてたんじゃないのか、俺はそう思っていた、
だからこそ、あの柴田がタマを選べたんじゃないか。
「……悲しかったし、辛かったけど。私の中にはずっとココさんが居ました。会えなくても、ちゃんとココさんは私を想ってくれてたでしょう?」
可愛い顔して、そっと首を傾げて俺の答えを待つタマを頭から食べたいくらい好きだ。
確かに、あの離れた期間が俺のタマへの気持ちを熟成させた。
「……もはや執念か呪いかってくらい、考えてたなぁ」
「……ふふっ、呪い」
もう、と俺の膝を叩くタマに腹の中の炎が小さくなっていくのを感じる。
「私も、お金なんていりません。あの人達から貰ったお金で、何かを得ても嬉しくないです」
それでも金は金。
もしタマに俺が居なければ、もちろん受け取って生きていく糧にするべきだ。
時間と、心を尽くした対価として受け取って然るべき金だから。
「だなぁ……その金で飯食うくらいなら、二人でお茶漬けの方が美味い、絶対に」
「あ、普通のお茶漬けよりココさんのお茶漬けは美味しいから、余計ですよ?」
可愛いな、コノヤロウ。
「考えながら、しばらく二人で過ごすといい」
「そうねぇ、こちらの回答は保留してあるし。二人で旅行でも行ってきたら?」
俺達のやり取りを聞いていた親父さん達が、そう言って、二人でそっちに向き直ったら、妙にニヤニヤしている。
「若いわぁ、いいわねぇ」
「僕達も行くかい?旅行」
真知子さんの呟きに、親父さんが瞬時に言葉をかける。
……どうやら親父さんは真知子さんにベタ惚れらしい。
「あら、アナタお休みできるの?」
「……」
「ふふふ、いいのよ。老後に世界一周旅行、期待してるから♡」
タマは多分、俺の安定剤なんだろう。
怒りを溜め込んで考え込んでいた頭と心を、いとも簡単に沈めてくれた。
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