上書き

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「なんか、想像出来ることで満足しちゃいました」 「……」 すり、と頬を俺の肩に触れさせて、タマ本当に満足気に息を吐いた。 「ほら、今までが今までだったから……あんまり一変に幸せだと、怖くて」 幸せが怖いと思った俺にも、その気持ちはよく分かる。 「タマ、小出しにしてたら死ぬまでに追いつかないぞ」 「え?」 タマをより胸に引き寄せて、不思議そうな頬に唇を押し付けた。 やわい頬と、同じシャンプーなのに甘く感じる香りを吸い込んで目を合わせる。 「こんなもんじゃねぇぞ?毎日、もっと楽しく過ごすんだ。巻いていかねぇと追いつかないぞ。もし子供が出来たらどうすんだ、時間が足りねぇ」 腕の中のタマを遊園地の遊具みたいに揺らして、俺は雑誌を引き寄せた。 「ほら、どれが一番ワクワクした?三日こもるのも悪くないけどなぁ……外で見た事ないもん見ようぜ」 ぱら、ぱらと俺がページをめくる。 タマは大人しく俺の腕の中でそれを眺めていた。 力まずに息をして、困らない程度に好きなもんが食えればいいと、新しい物を見たいなんて思いもしていなかった。 でも、タマが隣で楽しんで笑うなら。 旅行に行く準備だって億劫ではない。 なんなら旅のしおりでも作ってやろうか。 「ここ、いいなって」 「ん、これ?」 タマが指差したのは、随分前にテレビの旅行特集で見た事のある場所だった。 そこは富山の船でしか行けない温泉旅館だ。 どうやらタマは本当に俺とこもりたいらしい。 「……へぇ、いいじゃん」 「ほんとに?」 「うん、俺元々インドアだし、タマと二人で水の上ってのもいいな」 俺の返事に目を輝かせたタマは、早速旅館に電話をかけ始めた。 旅行シーズンじゃなかったのもあって、部屋は無事に予約できた。 そこからは、はしゃいだタマがわくわくと旅行カバンにあれやこれやと準備を始めて。 その子供みたいな笑顔に、俺は楽しくて堪らなかった。 今、タマの頭の中の大半は俺との旅行で占められている。 あのクソ野郎どもは遠くにある。 ……楽しもう。 二人でのんびり力を蓄えに行こう。 _____________ 今日はバタバタしてました泣 1ページだけの更新、ご容赦くださいませ*ˊᵕˋ* 弥子。
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