13. 本当に会いたいのは

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店内に入るとあの日と同じ受付の男性が私に気づいて、にこやかに迎えてくれた。 来たのはまだ二度目なのに、そのほっとする雰囲気に無意識に入っていた肩の力がふっと抜ける。 「おや、本日は上総様とご一緒なのですね」 「そこでたまたま会ったんだ。水槽に近いソファー席空いてる?」 「はい、ご案内いたします」 奥から出てきた案内役のスタッフが悟さんに深々と頭を下げてから、丁寧に案内をしてくれる。 私もこのまま一緒でいいんだろうか、と疑問に思いながら後をついていくと、店内の中心に短い半螺旋状のアイアン階段があり、そこを上ると広めのソファー席があった。 少しだけ目線が上がることで、さらに空間に広がりを感じる。ソファーは厚みと柔らかさが程よくて座り心地がとてもよかった。 一息ついたところで、この前と同じようにバーテンダーさんが飲み物のオーダーにやってくる。 「俺はとりあえずビール。今日はちょっと軽めのがいいな。ゆきのちゃんは?」 私はどうしようか考えて、この前と同じミモザを注文する。他のものをうまく頼める自信がないのもあるけれど、単純にあのカクテルが気に入っていた。 「かしこまりました。以前と同じようにお作りしてよろしいですか?」 「はい、お願いします」 バーテンダーさんが軽く一礼をして下がったあと、私は悟さんに声を掛ける。 「……あの、私もご一緒していいんでしょうか?」 「え、どうして?あ、ゆきのちゃんは一人の方がよかった?」 「いえっ、一人だと緊張すると思うので一緒の方が嬉しいんですけど、、」 本人のフランクな空気につられて忘れかけていたけれど、悟さんはこのお店の責任者というだけでなく、会社のめちゃくちゃ偉い人だ。 それに透子さんという婚約者もいるのに、私なんかがこんなに馴れ馴れしく接していていいのかと心配になる。 「あぁそういうこと?それなら大丈夫だよ。 この店にいるスタッフは、俺のこと昔から知っている人が多いんだ。受付の寺嶋さんもバーテンダーの高梨さんも修業時代にうちの家によく出入りしてたし。樹がここによく顔を出すのも、見知った顔が多いからじゃないかな? あと透子のことも大丈夫。ゆきのちゃんのこと知ってるんだし、すごく気に入ってたからね」 私を安心させるように言う悟さんに、私は少しだけ安心して頷いた。
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