1. 水曜日の憂鬱

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「新規案件っていえば、先輩は1年目で新規プロジェクトにアサインされたんでしたっけ?」 「うん、半年くらいだったかな。プロジェクトルームが名古屋で長期出張っていうオマケ付き」 倫花ちゃんの言葉に、私は6月に新人研修を終えたあとに配属された、某メーカーの大規模プロジェクトのことを思い出す。 年明けの本番稼働を控える中、仕様変更の連続で開発要員が足りなくなり、新人の私も放り込まれた。それまで新人研修の雰囲気しか知らなかった私は、初日から23時まで残業で震えたっけ。。懐かしい。 「そんなに羨ましがられるほど、楽しい現場ではなかったんだけどね……」 なんせ途中からは設計書すらなく、口頭で説明された内容を必死で書き取ったメモを頼りにプログラムを書き、できあがったプログラムを後から設計書に起こす、なんて順序もめちゃくちゃな有り様だった。 今こうして普通のプロジェクトに携わっていると、あの現場がいかに特殊だったかがわかる。 「えーいいじゃないですか、私、修羅場大歓迎です!大学の卒論研究のころは毎日実験で昼夜逆転生活で3時間睡眠とかザラでしたし。 プロジェクトルームに泊まりこんだり、『本番移行まであと〇日!』とか貼り出すんですよね?憧れる~」 私が遠い目をしていることに気付いているのかいないのか、私の話に引くどころか、ますます目を輝かせている。 私も、今振り返ればいろいろ勉強になったし貴重な経験だったと思えるけれど、できればもう二度とあんな現場は遠慮したい。 (可愛らしい見た目でほんと倫花ちゃんってギャップ女子。。) ある意味、ガッツがあって頼もしいとも言えるけれど。
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