4. 落花、枝に帰らず

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「居酒屋なんて嘘でしょ。もしかしてその女の人の部屋?」 「だから、違うって言ってんだろ」 「……お願いだから、嘘つかないでよ。それとも私なら簡単に騙せるって思ってるの?」 たぶん、というか間違いなく親しい女性がいるのは確実だった。 遠距離恋愛中の浮気。 自分には無縁だと思っていたことが現実になって、ショックな気持ちもある。 でも、それよりも。 辻褄の合わない出まかせを、 平気で淀みなく話す賢吾が怖くなった。 自分が好きになった人はこんな人だったのだろうか。 今まで何も疑わずに全部信じていたけれど、実は気付いていない嘘もあったのかもしれない。 怖い。 楽しく幸せだと思っていた2年間さえも、嘘だったのかもしれないことが。 「さっきの女の人のことが好きなの?」 自分で言っていて、自分の言葉に傷つく。 「いつから?」 黙ってないで、何か言ってよ。 「もしかして、先輩とキャンプっていうのも嘘?その人と旅行に行くの?」 「違えよ、キャンプは本当」 (キャンプ『は』本当、ね……) それ以外はほとんど嘘だと言っているようなもの。 語るに落ちるとはこのことだ。 でも、もう今さらそのことを指摘する気にもなれなかった。 言ったところで、また嘘の上塗りをされるだけなんだから。 そのあと、どうやって電話を切ったのか、私はよく思い出せなかった。 ただ電話を切ったあと、 (今日が金曜日でよかった、明日を気にしないで思いっきり泣ける) と思ったことだけは覚えている。 そしてその日以降、賢吾との連絡は途絶えてしまったのだった。
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