5. 知らない一面

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5. 知らない一面

世間の大半の人が待ち望んでいるであろう、ゴールデンウィークをむかえた。 今年の連休は天候にも恵まれて、全国的に大きな崩れもなく絶好の行楽日和になるらしいと、テレビの向こうの天気予報士が笑顔で伝えている。 けれど特に何の予定もない私にとっては、そんなニュースも意味のないものに等しい。 (せめて飛び石の平日は有休にしないで、出社にしておけばよかったかな) 私は世間から隔絶されたかのように、1日中ベッドの上でスマートフォンをいじりながら過ごしたり、食事も昼と夜の1日2食、時には1食だけの日もあるなど、不摂生な生活を送っていた。 掃除も適当、どんなに忙しくても1日置きにはかけていた掃除機も、クローゼットに仕舞ったままだ。 ただそれも4日目くらいになると、さすがにこのままではいけないような気がしてくる。 ゴールデンウィークが明けたら仕事が始まるのに、こんな自堕落極まりない生活をしていたら社会復帰できなくなりそうだ。 どこでもいいから、外に出かける計画を立てよう――― そう思い立って、横浜中華街や江の島など日帰りで行けそうな行楽地や、大型アウトレットなどを検索するも、多くの人手で大賑わいだろうと躊躇する。 (きっと、幸せそうな家族連れやカップルばかりだよね。さすがにメンタルが削られそう…) どこがいいかとあれこれ考えて、私は代官山に行くことに決めた。 もちろん代官山もそれなりに混んでいるだろうけれど、メイン通りを少し離れるとこじんまりとした個人店も多く、1人でもふらっと入りやすいような気がしたからだ。 ネットで調べると、雑誌で見て気になっていたカフェが2日後なら予約が取れそうだった。 さっそく予約を完了させると、久しぶりに気持ちが上向いてくる。 (よし、何だか少しやる気が出てきた) 楽しみな予定ができた効果なのか、私は少し明るい気分になっていた。
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