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「泊まったホテルのスパで使われてたんです。すっごくいい香りで、ブランド名を教えてもらって自分のも買っちゃいました」
ハーブだろうか、まだパッケージを開けていないのにすでに仄かないい香りがしている。リラックスできそうな癒される香りだ。
「ありがとう!嬉しい、今日帰ったら早速使うよ。旅行は楽しかった?」
「ずっと天気も良くて海もめちゃくちゃ綺麗で最高でしたよ~!もっといたかったなぁ、またすぐにでも行きたいくらいです」
「旅行って楽しいと帰りたくなくなるよね」
「そうそう!そうなんですよー」
ニコニコと楽しそうに話す倫花ちゃんが、仕事のテンションとは打って変わっていきいきしていて可愛い。自分も楽しい気分をおすそ分けしてもらったような気持ちになる。
「こんないいお土産もらったのに、私からはお返しできるものが無くてごめんね?」
「そんなのいいですよ!…あの、彼氏さんのところへは結局?」
「うん、、行ってない」
他の女性の影があったことや喧嘩の内容は伏せて、ただ大喧嘩の末に音信不通になったことだけを話した。
倫花ちゃんは驚いて、信じられないとでもいうように首を振る。
「全然返信来ないんですか?」
「うん、メッセージも既読が付かないんだ。電話も出ないし」
「…先輩、私は彼氏さんには会ったことないですけど、たとえ別れるにしてもそんなやり方するなんて最悪ですよ」
別れる。
そうか、私たちは別れたことになるのか――――
客観的に見ればその通りなのかもしれない。
けれど、その言葉のインパクトと重さに対して、まだどこか現実ではないような、実感が沸かないのも本当だった。
「先輩って可愛いしモテるんですから、次行きましょう次!」
「やだなぁ、私なんかモテないよ」
「何言ってるんですかー、先輩が2年目で私たちの新人研修にアシスタントで来てくれた時、あの可愛い先輩は誰だ?ってめっちゃ盛り上がったんですから!」
そんな話は初耳だ。たぶんこんなことになって落ち込んでいると思って、倫花ちゃんなりに励ましてくれているだろうな。
「あはは、ありがと」
その気持ちだけは、ありがたく受け取っておこう。
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