6. 試してみる?

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「泊まったホテルのスパで使われてたんです。すっごくいい香りで、ブランド名を教えてもらって自分のも買っちゃいました」 ハーブだろうか、まだパッケージを開けていないのにすでに(ほの)かないい香りがしている。リラックスできそうな癒される香りだ。 「ありがとう!嬉しい、今日帰ったら早速使うよ。旅行は楽しかった?」 「ずっと天気も良くて海もめちゃくちゃ綺麗で最高でしたよ~!もっといたかったなぁ、またすぐにでも行きたいくらいです」 「旅行って楽しいと帰りたくなくなるよね」 「そうそう!そうなんですよー」 ニコニコと楽しそうに話す倫花ちゃんが、仕事のテンションとは打って変わっていきいきしていて可愛い。自分も楽しい気分をおすそ分けしてもらったような気持ちになる。 「こんないいお土産もらったのに、私からはお返しできるものが無くてごめんね?」 「そんなのいいですよ!…あの、彼氏さんのところへは結局?」 「うん、、行ってない」 他の女性の影があったことや喧嘩の内容は伏せて、ただ大喧嘩の末に音信不通になったことだけを話した。 倫花ちゃんは驚いて、信じられないとでもいうように首を振る。 「全然返信来ないんですか?」 「うん、メッセージも既読が付かないんだ。電話も出ないし」 「…先輩、私は彼氏さんには会ったことないですけど、たとえ別れるにしてもそんなやり方するなんて最悪ですよ」 別れる。 そうか、私たちは別れたことになるのか―――― 客観的に見ればその通りなのかもしれない。 けれど、その言葉のインパクトと重さに対して、まだどこか現実ではないような、実感が沸かないのも本当だった。 「先輩って可愛いしモテるんですから、次行きましょう次!」 「やだなぁ、私なんかモテないよ」 「何言ってるんですかー、先輩が2年目で私たちの新人研修にアシスタントで来てくれた時、あの可愛い先輩は誰だ?ってめっちゃ盛り上がったんですから!」 そんな話は初耳だ。たぶんこんなことになって落ち込んでいると思って、倫花ちゃんなりに励ましてくれているだろうな。 「あはは、ありがと」 その気持ちだけは、ありがたく受け取っておこう。
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