1. 水曜日の憂鬱

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ちょうどタイミングよくプロジェクト用の携帯電話が鳴った。問い合わせの電話だろうか。とりあえず話を逸らすことができてホッとする。 私も途中になっていた仕事に取り掛かろうと自分のPCに向き直ったとき、 「早瀬先輩、大変です!」と珍しく慌てた声で倫花ちゃんが駆け寄ってきた。 「システム部の脇田さんからなんですけど、工場への製造指示が止まっているそうです。あと仕入れ先からの発注も遅れてるみたいで」 システムトラブルだ。 私はすぐにメールを確認する。 アラート検知のメールや電話は来ていない。本番システムが止まっているわけではなさそうだ。 他に考えられる可能性としてはデータ容量逼迫かメモリ不足。それならもっと他にも影響が出ていそうな気がする。となると……バッチ処理の遅延? 私は頭をフル回転させながら、影響範囲と考えられる可能性をリストアップしていく。 「わかった。電話代わるから、倫花ちゃんは四宮(しのみや)課長とインフラの大野さんに状況を連絡してくれる?」 「了解です!」 私は自分のPCでシステムへアクセスしながら電話を受け取り、保留を解除する。 「お待たせいたしました、お電話代わりました早瀬です。はい、今吉沢から聞きましてーーー」 その1本の電話から、お昼休み明けののんびりしていた雰囲気は一気に吹き飛び、トラブル対応とリカバリーに追われ、午後の時間は目まぐるしく過ぎていった。 原因を特定してリカバリーしたあと、データ修正や伝票の再発行などの対応をしてシステムが滞りなく動くことを確認できたのは夕方。 それから今回のトラブルの状況をまとめた資料作成をして、気がつくと22時近い時間になっていた。
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