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(終わった。ちょっと休憩しよ……)
私は一度大きく伸びをして、パソコンをロック画面にして席を立つ。
廊下に出て、フロアの突き当たりにあるリフレッシュルームへと向かう途中、
スマホを見るとメッセージアプリの通知が来ていた。
(あ、賢吾から着信が来てる)
通知のマークを見て、少し気持ちが浮上する。
南田賢吾は、付き合って2年になる彼氏だ。
もともとは同じ大学のゼミ仲間で、レポート作成を協力したり就職活動を励ましあったりと、仲の良い友達の1人だった。
卒業してそれぞれ別の業界に進んでからも、定期的に近況報告をしたり大学時代のメンバーを含めて飲みに行ったりしていたっけ。
そんな関係が変化したのは、社会人1年目の終わりの頃。
そのとき私は、配属先のプロジェクトでものすごく初歩的なミスをおかしてしまった。普段だったらありえないようなミスで、それを指摘されるまで気づかなかった自分にもショックで、めちゃくちゃへこんで。
ちょうどその夜にタイミングよく電話をくれたのが賢吾だった。
ぐずぐずと落ち込む私を、電話越しにひたすら励ましてくれた。
「早瀬は頑張ってるよ。でももしどうしてもキツくてこれ以上頑張れないってなったら、辞めたらいいじゃん」
「無理だよ。辞めたらすぐ次見つからないかもしれない」
「見つかんなかったら、俺んとこ来れば?」
友達だと思っていた賢吾からの、まさかの告白だった。
「俺、早瀬とならうまくやっていける気がする。
よければ俺と付き合ってくれない?」
その時は頭が混乱していて返事を保留してしまったけれど、賢吾には大学時代からの気心の知れた居心地の良さも感じていて。
私も、賢吾となら恋人としてもいい関係を築いていける、そう思った。
そして1週間後、仕事帰りに待ち合わせをしてOKの返事をして、私たちは交際することになった。
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