13. 本当に会いたいのは

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確かに2ヶ月前の私は怒っていたかもしれないけれど、今は違っていた。 この前倫花ちゃんが私以上に憤慨していたことを、どこか他人事のように感じていたことを思い出す。 (2ヶ月前は、あんなに聞きたかった声なのに) 私の中で賢吾への気持ちがこんなにも枯れていたことを、初めて自覚した。 「怒っているっていうか、いきなり連絡が来てびっくりしてる、かも……私なら元気にしてるよ。もういい?」 「待って、実は今さ、本社の研修で1週間東京来てるんだよ」 「え、東京に?」 「だから少しだけでも会えないかと思って」 会うって私と?何事もなかったように? 賢吾がどういうつもりでそんなことを言ったのか分からず混乱する。 ただ会ってごはんを食べる?それとも改まって面と向かって別れを言われる?それこそ今さらだしそんなの無理だ、耐えられる気がしない。 私が口を開く前に、賢吾があのさ、と言葉を続ける。 「俺、ゆきのにひどいことしたよなって。あの最後の電話のときは、ゆきのに言われたくないこと全部言い当てられて、カッとなって着信拒否してさ。やっぱり、会いたくないよな?」 そう賢吾がぽつりぽつりと話し出すのを、私は黙って聞いていた。 確かにあのときはショックだったけど、でももう終わったことだ。 そう言うと、今度は賢吾の方がショックを受けたみたいにそうか、とだけ言った。こんなのってずるい。まるで私が傷つけているみたいだ。 「それに会うってどこで?お店で顔合わせてごはん食べたり飲んだりするの?」 「……部屋、入れてくれないんだ?」 「当たり前だよ。あのさ、新しい彼女がいるのにそういうの、だめだと思うよ」 私は賢吾の申し出に呆れて非難する。 「彼女?」 「電話の向こうにいた女の子のこと。いいよ今さら隠さなくたって」 そこまで話をしたとき。 ――――あ。 唐突に、これまで思い至らなかった一つの答えが私の頭の中に降りてきた。
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