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まるで急に霧が晴れて、すべてがクリアになるみたいな感覚だった。
姫は、今私が賢吾を拒否したように、たとえお酒に酔っていたって誰でも部屋に呼ぶわけではないし、キスだってしない。
何とも思っていない相手だったら、私が宇多川さんの思惑に嵌ってどうなろうと首を突っ込んだりもしない。
そういう信頼のもとに、私たちの関係は成り立っているはずだったのに。
それらがすべての答えだったのに。
―――姫にとって私は何なのだろう。
ずっとそれが分からないと思っていたことがそうではなくて、初めから答えはすぐ近くにあったんだ。
でもそれに気づいたら、自分の中で育ってはいけない感情が生まれてしまう気がして、勝手に分からなくしていた。
「俺さ、ゆきのに甘えてた。それと負けられないっていう変なプライドもあって。俺が仕事に悩んでいたときに、ゆきのはいろいろアドバイスくれたじゃん?でも俺はお前の話を聞いても、全然知らない業界で内容も難しいし悩みを聞いても何も言えなくて。
それがすげーかっこ悪いように思えてさ。俺の方がもっともっと大変なんだって、そういうふうに見せたかったんだと思う」
そう、私も甘えていたんだ。
誰よりも人の表情や心を読んでしまう人だからこそ、それ以上踏み込んでこない姫の優しさに。
私が見てみぬふりをするたびに、たくさんの受け取り損ねた思いが私の足元に晒されている。
キスした後の、あの傷ついた顔。
あんな顔をさせたのは、私だ。
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