1. 水曜日の憂鬱

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1. 水曜日の憂鬱

週の半ばに差し掛かった水曜日の午後。 1時間のお昼休憩から戻って席につきPCを立ち上げるも、お昼休み明けの眠くなった頭は回転が鈍い。 (今日のランチ、ちょっと食べすぎだったかな) 今日の定食屋さんで食べたボリューム満点の定食を思い出して、今さらながら少し後悔する。 今日の定食屋さんは、安いのにメインのから揚げに加えて小鉢が三つに豚汁もついてくるという、破格のコスパ最強なランチだった。 (ダメだ、仕事に集中しないと……) 私はR&Sソリューションズというシステム開発会社に新卒で入社し、開発部に配属されて今年で4年目になる。肩書きは一応開発エンジニアだ。 今やどの企業もIT化が進んでいる中、専門的な知識や技術を持たないクライアント企業に代わって、要件定義から設計・開発、そして導入したシステムの保守・運用まで、システムに関わる部分をトータルで対応するのが主な仕事だ。 普段はオフィスビル内にカフェテリアがあることに加え、顧客のシステムはお昼休みも関係なく稼働しているため、いつ問い合わせの電話が掛かってくるかわからない。そのため、オフィスの外に出てお昼を食べることは少ない。 今日の午前中は別件で客先打ち合わせがあり、オフィスに戻る途中で上司おすすめの定食屋さんでランチを食べてきていた。たまに外出の用事があるときは、外でランチができるのがひそかな楽しみになっている。 しかしその代償というべきか、マウスのカーソルを動かしながらパソコンの画面に映し出されている資料を読もうとするも、なかなか内容が入ってこない。 ちょうど週はじめからの疲れも溜まってくる水曜日。 この日が休みだったらどんなにいいだろう。 求む、週休3日制。 私は現実逃避めいた考えを振り払うように、黙々とキーボードを打ち込む。 その時「すみません」と隣りの席から話しかけられて、私は手を止めた。 「早瀬(はやせ)先輩、今少しいいですか?」 声をかけてきたのは、後輩の吉沢倫花(よしざわりんか)だった。 「うん大丈夫だよ、なあに?」 倫花ちゃんは1つ年下の3年目。 私が働く開発部第三課の後輩で、彼女が配属された新人の頃から一緒に仕事をしている。明るくてコミュニケーション能力が高く、今では課のムードメーカー的存在だ。 「先週課長に頼まれた提案資料のたたき台なんですけど、内容のチェックお願いしてもいいですか?」 「うん、いいよ。いつもの共有フォルダに入れておいてもらえる?」 「はい………あの、先輩」 いつもは何でもハキハキと話す彼女が、珍しく口ごもっている。
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