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仰向けに引き倒された後は、自分よりも一回りも二回りも大きな体が、圧迫するように乗ってきて、息もできなかった。
もがいている間に後ろ手を拘束され、うつ伏せに押さえつけられたまま背中に乗られ、身動きが取れなくなった。
「やあ。覗き魔くん?一日ぶり!」
青木の黒髪を掴み上げたのは――。
「……桃瀬!!」
ピンクブラウンの肩までの癖毛をうねらせた桃瀬だった。
今日はちゃんとブレザーまで着ているのに、どこからどう見ても女性にしか見えない。
「お前なら来るって信じてたよ。この変態野郎が」
桃瀬は笑いながら顔を寄せ、青木の唇にキスをした。
「…ングッ!?」
何か小さな錠剤が口の中に入ったと思った瞬間、やけに細く長い舌で喉元まで突っ込まれた。
「はい、ごっくーん♪」
背中に乗った黒崎が、薬嚥下ようゼリーのCMを真似て歌う。
青木の肩口を掴み大きく上下させると、錠剤はあっという間に喉奥に流れていった。
「……何を飲ませたんだよ!?」
「さあ?」
桃瀬は青木の髪の毛を離すと、前方にしゃがみながら楽しそうに頬杖をついた。
「でも飲んどいたほうがかえっていいと思うよ。素面だと辛いから」
桃瀬のピンク色の唇がニヤリと笑う。
「……ッ!!赤羽!!!」
青木は悲鳴のような声を上げた。
「助けてくれ!!やっぱり桃瀬と黒崎がいたっ!待ち伏せしてやがった!!」
必死で叫ぶ。
しかし廊下にいるはずの赤羽の声は返ってこない。
「まだ気づかないの?殺人鬼って頭がいいイメージだけど、例外もいるんだな」
桃瀬が少し鼻にかかる声で言う。
「あいつは僕らの仲間だよ?」
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