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日が経つごとにマロンはどんどん大きくなりました。
そのある日、いつものように寝床から出ると、マロンはたくさんの人たちの前に現れました。みんな指をさしたり手を叩いたりと笑顔になっていました。
その中にひとり見覚えのある女の人が立っていました。
「ママ」
マロンはまなちゃんの前へ行きました。抱きしめてもらおうとしたそのとき、見えない壁にはじかれました。そこには厚いガラスの壁があったのです。
「ママ、マロンだよ。マロンはここにいるよ」
マロンは声を上げ、前足を上げました。さらに立ち上がると、まなちゃんや他の人たちは小さく見えました。さっきまで笑っていた人たちが後ろへ下がり、マロンを見ておびえていました。
そのうち、まなちゃんのとなりにいた小さな女の子が泣き出しました。その子はマロンが初めて会ったときのまなちゃんにそっくりな女の子でした。泣いている女の子にまなちゃんは頭をなで、抱きしめました。
マロンは前足をおろし、鳴くのを止めました。
「ママは他の子のママなんだ。もうマロンのママじゃないんだ」
まなちゃんと女の子がいなくなると、マロンも寝床へかえりました。
「マロンが大きかったから、ちょっとビビっただけだろ。そんなに落ち込むなって」
ヒョーの言葉も今のマロンには届きません。その日の夜、マロンは寝床で鳴きました。
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