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 さらに月日が経ち、マロンは立派な大人のトラになりました。今日も肉のかたまりをもりもり食べ、人々の前で動き回りました。  そのとき、マロンの前に見たことのある2人がいました。まなちゃんと少し大きくなった女の子でした。 「また、来てくれたんだ」  マロンは飛び上がりそうになりましたが、すぐに自分がトラであることを思い出しました。マロンは2人がおどろかないようにゆっくりと近づきました。 目の前まで来ても、まなちゃんと女の子は逃げませんでした。けれど、見えない壁があり、なでてもらったり抱きしめてもらったりすることはできません。  マロンはネコだったときのように壁に頭をこすりつけました。でも、見えない壁は固く冷たいままです。 「もう、なでてもらえないよね」  マロンが正面を見ると、まなちゃんはマロンが頭をこすりつけていたところに手をつけていました。小さな女の子も真似して手を置きました。  マロンはもう一度頭をこすりつけました。今度は温かいような気がして、ネコだったときのことを思い出しました。
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