血を奪いし者の宿命

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「ん……」 「あ、起きた? よく寝てたね」 目が覚めると、(そう)が私の顔を覗き込んでくる 「……お前と会った日のことを夢で見た」 「吸血鬼も夢とか見るんだね」 そう言いながら、笑みをこぼす蒼の頬に手をのばす。 「蒼」 「ん? なあに」 少し顔を赤らめながら、私に触れられるのが嬉しいとでも言うように、こちらを見る。 「これからも……いや、なんでもない」 「なに~」 ずっとそばにいてほしい。 そう言いかけて、言葉をのみこんだ。 怒る顔も、笑う顔も、恥ずかしがる顔も、すべてが愛おしく思えた。 私は、人間の血がなくては生きてはいけない自分を許せなかった。 しかし私が血を飲まずとも、この人間の命は別の者によって奪われることだろう。 二人に「これから」という未来は許されない。 ならば、私がこの手で、最期のときまで、見守り続けたい。 私の血となり、肉となるその日まで……。 どうかそばにいることを許してほしい。
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