血を奪いし者の宿命

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人間とは、愚かな生き物だ。 たった100年も生きられない身体で、身を削り働き、幸せというものを探し、朽ちていく。 魔界の者たちはそんな人間を当たり前のように喰らう。 人間が牛や豚と言った生物を食すように、魔界にとっては人間が食なのだ。 獣族は肉を、魔族は骨と血を。 余すところなく。 我らヴァンアピール一族は人間の血が無くては生きてはいけない。 人間の血さえあれば不老不死でいられるのだ。 しかし、魔界では人間の狩りに制限がある。 やつらは命が短い上に繁殖力も乏しい。 制限をかけずに人間を食せば、すぐに絶滅してしまう。 人間がいなくなれば、我々も長くは生きられない。 だから、必要最小限の人間のみ食すことになっている。 人間のほとんどが、我々の存在を知らずに一生を終え、魔界の者たちに捕食されていることも知らずに生きている。例え生贄になったとしても、周りにいる人間はその者の記憶を奪われ、存在すらなかったことにされている。親や友が目の前で殺され、消えても、なんの疑いもなく最初から存在しない者となる。 本当に愚かな生き物だ。
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