血を奪いし者の宿命

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初めて人間の血を身体に入れたとき、とてつもない力に支配されそうになった。 幼いながらに、この力を使えばすべてを手にいれられると思った。 それからは人間の血が欲しくて欲しくてたまらなくなり、与えられるがまま飲んでいた。 しかし、初めて人間狩りに行ったとき、人間が私と同じように生きていることを知った。 身なりも似ていて、言葉を喋り、日が昇るころから働き始め、日が落ちると眠りだす。 己の手で食物を育て、子を育て、たった50年ほどの短い時間を懸命に生きていた。 仲間が次々に人間を殺していく姿が、残酷に思えた。 我々の姿を見るだけで恐怖し、悲鳴をあげ、涙を流し、命乞いをし、自分の身を挺して我が子を守る。 私は何の罪もないこの人間たちの血を飲み、今まで生きていたのだと、その時に知ったのだ。
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