血を奪いし者の宿命

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王である以上、魔界を守らなければいけないという使命はあるものの、それ以上の何かがあるわけでもない。 暴れる魔獣や、悪さをする者たちを制するのは生きがいでもなんでもない。 身を削るほどの仕事でもない。 誰もが私にひれ伏し、誰もが私の言うことを聞く。 自ら動かずとも、言えばすべてが手に入るこの世界で。 「イヴェリス様、そろそろ次の“分け与える者”を選びに人間界へ」 「ああ、分かっている」 100年もすれば、人間の世界は大きく変わる。 人間は魔力がない分、知恵を使う。 その知恵によって、様々な文明が生まれ、時に魔力や魔法をも越すようなものが生まれる。 「ゴグ、準備を」 「かしこまりました」 魔界と人間界を繋ぐには、大きな力を使う。 一度使えば、魔力を消耗し、しばらく動けなくなる。 そのために結界を張り、人間にバレぬよう回復を待たなければならない。 100年前の人間界は、自然が多く、人もそれほど多くはなかった。 だが今は、建物が多く建ち並び、人間の気配がそこら中で感じとれた。 加えて、太陽の光が容赦なく照り付け、回復を遅らせる。 魔力を消耗し衰弱した私は、影のなかでうずくまる。 「ゴグ……すまない、魔獣の血を」 「今すぐご用意します。しばしの辛抱を」 魔界では感じることのない不快なほどの暑さ。 魔力を回復するための血を口にしなければ、張っていた結界が崩れてしまいそうだった。
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