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「あの~……大丈夫ですか?」
「……ッ!」
突然の声に顔をあげると、目の前には心配そうな顔で立っている女人。
私としたことが、人間が近づいてきていることにまったく気づかなかった。
「近寄るなッ!!」
そう言い放っても、目の前の女は屈することなく私に近づいてくる。
結界を強めようと残り少ない魔力を振り絞るも、その女は顔色ひとつ変えずに私に近づいて来た。
人間のような身なりで隠していた私の姿が、徐々に元へと戻ってゆく……。
目の前がクラクラした。
それ以上近づかれては、飢えている私はこの女の血を欲してしまいそうだった。
――私に構うな、近づくな、触れるな
何を言っても聞かない女が、何かをしようとしている。
他の人間を呼ぶつもりだ。
女の手から人間を呼びよせるための何かを奪い取ると、女はひるんだ。
「イヴェリス様!!」
その瞬間。すごい勢いで、使者の魔獣が戻ってくる。
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