血を奪いし者の宿命

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口に魔獣の血の味が広がり、身体に力が戻ってくる。 結界を強めると、すぐに目の前の女がバタッと倒れる音が聞こえた。 「この女、なぜ結界のなかに入りこめた?」 「イヴェリス様……次の“分け与える者”は、この方のようです」 「なんだと」 目の前で倒れている女に視線を戻す。 次はこの者の命を奪わなければならないと思うと、気が重くなった。 指で女の額に触れると、この女が生きてきた時間や思想が私の中に流れ込んでくる。 この女もまた、他者のために自分の意思を隠し生きているようだ。 ただ、今までの人間と違うのは、守るべき人間も守られるべき人間もいないこと。 悲しむときも喜ぶときも、いつも一人だったようだ。 どこか私と似ているような気がした。 「どうしますか?」 「この女の住処はわかるか?」 「はい」 「なら、連れていこう」 ぐったりとしている女を抱きかかえ、この女の住処へと移動する。 その場所は、昔の人間とは違い、狭い空間に様々なものが詰め込まれていた。 「人間は、この短い年月でまた色々と変わったようだな」 「はい。だいぶ文明が進んでおります」 ひとつひとつ、物に触れると女の記憶が流れ込む。
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