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第1話 夫婦
神奈川県鎌倉市に移り住んで二十年が経った。
僕の名前は花咲蘭二郎。
学生結婚した妻との間に二人の子供がいる。
上の子は男の子、名前は大地。
22歳で今は東京の大学生。一人暮らしを始めた。大地の巣立ちを僕はどこか寂しく感じてる。
下の子は女の子、名前は蒼空。
17歳で地元の高校に通っている。親の欲目ばかりではなく蒼空は宇宙一可愛い。ただ最近僕に冷たい。寂しい限りだ。
僕の妻、弥生さん。
小学校の先生をやっている。
一つ年下で大学生の時に出会って大恋愛の末に結ばれてできちゃった結婚をした僕と弥生さん。
今、僕はとても幸せだ。
家族のために働いている充実感が僕を満たしている。
弥生さんはパワフルでぐいぐい引っ張ってくれる。
年下なのに姉さん女房みたい。僕は彼女のリードで安心した人生を送れていると言っても過言ではない。
僕の傍からの評判は尻に敷かれた亭主らしいのだが一向に構わない。
朝は御飯の前に波の穏やかな海岸を眺めながら一人で散歩するのが僕の日課だ。
朝の潮風が優しく頬を撫でて通り過ぎていく。
僕は今ある幸せに浸っていた。
人から見ればささやかな幸せに見えるだろう平々凡々な僕の人生。
充分に幸せだ。
そう数時間後、青天の霹靂なとんでもない告知を受けるまでは。
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