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売店を出たら凛香はもういなかった。明彦は病室に戻る。母に買ってきたものを渡した。
「ご飯が全部食べられるように食べ物も買ってきたよ。おかずも全部食べるんだよ」
「そうね。ありがとう、明彦」
母はテレビ台の下にある冷蔵庫に海苔の佃煮を入れた。ペットボトルのお茶が何本か入っていた。入院した日に父が買ったのだろう。
「ご飯はどんなものが出るの?」
「焼き魚とかハンバーグとか。特別変わったものはでないけど副菜が多いから量が多いの」
この病院の面会時間は一時から六時だ。食事は八時と十二時と六時。夕飯の内容を見ようと思えば見れる。でも今は二時。あと四時間もいられたら母が昼寝もできないだろう。
「無理してでも食べて。そうだ、なにか食べたいものがあったら、また売店に行って買って来るよ」
「特にないかな。明彦はお昼を食べたの?」
コンビニのお握りを二つ食べた。栄養が偏っている。人のことは言えない。
「食べたけど、まだ足りないな。野菜ジュースを買ってくるよ。お母さんの分も」
「また行くの?」
「うん。どうせやることないし」
明彦はカーテンを開けて外にでた。廊下を歩いてエレベーターに向かう。後ろから凛香が歩いて来た。
「また売店に行くんですね。その前に談話室でちょっと話しません?」
売店は急ぎではない。凛香の話とはなんだろう。
「いいですよ。自動販売機でお茶でも買いましょうか?」
「あ、じゃあ私、部屋から持ってきます」
明彦は奢ってあげようと思ったのだが、それを言う前に凛香はパタパタと部屋に戻ってお茶を二本持ってきた。
「これで良かったら飲んでください」
明彦は「すみません」と言って受け取った。
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