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出前はとても美味しかった。レバニラ炒めはレバーが柔らかくてニラがシャキシャキしていた。炒飯もエビがぷりぷりで味付けがちょうど良かった。父も満足したようだった。
少し休むと父が朝食用に食パンと卵、ハム、野菜を買いに行くと言う。近所のスーパーは九時から十二時までやっている。夜のうちに行っておいたほうがいいだろう。明彦は昼間のうちに自分が行っておけばよかったと後悔した。
父が買い物に行っている間、お風呂を溜める。明彦は熱めのお湯が好きだ。温度設定を四十二度にして溜まるのを待つ。
お風呂の横にある和室でごろりと横になった。この家に疫病神がいる。そう思いながら天井を見ていたら押し入れから物音が聞こえた。明彦は身構えた。がらりと押し入れの襖が開いた。眉の垂れた細いお爺さんが出てきた。茶色いぼろ布を着ている。
「どうやら明彦くんにはわしがいることが分かってしまったようだね」
疫病神だ。明彦は大きく頷いた。
「お守りなんか置いているけど、わしは出て行かないよ」
明彦は恐怖と驚きで何も言えない。凛香が退院してここに来てくれることを待っているしかないのだ。
疫病神はニタリと笑うとまた押し入れに戻って襖を閉めた。明彦は腰が抜けた。
お風呂が溜まった音楽が流れた。お湯は自動で止まるようになっている。明彦はリビングに行ってテレビをつけた。少しでも現代のものに触れていたかった。十五分くらいすると父が帰って来た。
「明彦、お風呂を溜めておいてくれたのか。ありがとうな」
「あ、ああ。僕が先に入っていいかな。今日は早く寝たいんだ」
正直、お風呂に入る気もしないのだが、今日は雨に濡れたし汗も掻いた。父がリビングにいてくれるうちなら大丈夫だろう。
「明彦が早く寝るなんて珍しいな。いつもは遅くまで勉強しているのに。たまにはいいんじゃないか。肩の力を抜くのも。私も今日は早く寝るとしよう」
何も知らない父はにこやかだ。明彦は浴室へ行った。体を洗ってお湯に浸かる。疫病神はいつから家にいたんだろう。
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