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6.
すると、黄丹は言う。
「卵詰まりになって、食欲不振、脱水、あとは後ろ足が麻痺するらしい。卵もそのままにしておくと腐っていくしな。無精卵はあまりいいことがない」
「そう、なんだ⋯⋯」
自分が卵を産める立場ではなければ、深刻そうな声音は出さなかった。けれども、その可能性があるから恐ろしく感じてしまい、小さく震えていた。
「だけど、無精卵でも役に立つことがあるみたいだな」
「えっ、本当!?」
「ほら、見てみ」
思わず声を上げる藤田に、携帯端末の画面を見せてきた。
個人的に書いているブログのような記事の一文を目で追った。
『貴重な栄養源として、ある国では重宝されているだとか』
二度読んで、さらには前後の文も合わせて読んでみるが、黄丹が有益な情報だと言っているらしい文はそれしかなかった。
「どれか分かったか?」
「⋯⋯貴重な栄養源として、ある国で重宝されるとかなんとかのところ?」
「そう、それ。めっちゃ役に立つっぽくない?」
「役に⋯⋯立つ、かな⋯⋯」
何とも言えない気持ちでいると、「不満かよー!」と騒いだ。
「お前が悲しそうにしているから、俺なりに元気づけようとしたのに、不満か!」
「不満というかなんというか、素直に喜んでいいところなの?」
「卵を産めるようになってしまったんだから、受け入れて喜べよ」
「えぇ〜⋯⋯」
暴論だ、と心中でため息混じりに呟いた。
原因が分からない以上、対処を考えなければならないのは分かるが、黄丹が言うように素直に受け入れて喜ぶべきなのかどうかは、また別の話のような気がする。
複雑な気持ちを抱えていると、「ともかく」と前置きをし、
「一旦はこの話はこれで終わらせて、次の講義に行くぞ」
「えっ、もうそんな時間?」
立ち上がり、さっさと行こうとする黄丹の後を追うように、藤田も慌てて身支度を整え、隣に並んだ。
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