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忠実すぎるのも考えもの!
各家庭にひとつ、政府からお手伝いロボットが配置されるようになってから数十年が経過した。
僕たち二十代にとっては、生まれる前から存在する家族のようなものだ。
彼ら、彼女らにはとても優秀なAIが搭載されている。家族がいない間に掃除や洗濯、料理を作っておくくらいは朝飯前だ。
「いいかい、エリック」
去年から一人暮らしをすることになった僕の家にも、お手伝いロボットが来た。彼の名前はエリック。人間の子供くらいのサイズで、全身が真っ白、丸い頭に円柱型の体とアームの腕がくっついたデザインだ。
丸い頭には愛嬌たっぷりのニコニコした顔がついている。お手伝いロボの中では安価なタイプだが、小さなワンルームで仕事をするには十分な性能と言える。
「君は今日、とても重要なミッションを任されている!」
『ハイ、なんでしょうか?』
「今日この家にとても大切なお客様がやってくる!彼女を丁重にもてなして欲しいんだ。僕はその、大事な用事で今から大学に戻らないといけなくて……ひょっとしたら彼女が家に来るまでの時間に帰ってこられないかもしれなくて」
ぶっちゃけ、大学で先生から呼び出しを食らったのだ――レポートの問題で。エリックに代わりに書いてもらったやつがバレた可能性が高い。
すぐに家に戻るつもりだが、お説教なのでどれくらいかかるかわからないのだ。
「彼女のご機嫌を損ねないよう、話し相手になってほしい!た、ただ……いくつか重要な問題点があるからそれを気をつけてほしいんだ、例えば……」
僕はエリックに、事細かな指示をした。
彼女――万理に触ってほしくない棚、パソコン。それから僕の秘蔵のコレクションが絶対バレないようにしてほしいことなどなど。
「いいかい?絶対に触らないようにと万理に言ってくれよ?でも彼女は大事なお客様だから乱暴に扱ってはいけない。頼むよ?」
『わかりました!難しいですが、頑張ります!』
「よし」
エリックの返事に、僕は安心して家を出た。そして案の定、教授にこってり絞られて、彼女との待ち合わせに三十分も遅刻してしまうことになる。
家で先に待っていた万理は案の定怒っていた。しかし、怒っていた理由は遅刻のせいではなく――。
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