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 BちゃんとCちゃんがあんなことになったのは、下校中、私と通話をしていた時でした。その日、私は学校を休んでたんです。夏風邪を拗らせてしまって。二人は今からお見舞いに行くよーって感じで私に電話をくれたんです。でもそれが思いの外盛り上がってしまって、結局学校から私の家までの移動中ずっと通話していようってなったんですね。まあ、よくあることなんです。こういうの。    暫くは他愛もない話で盛り上がっていたんですが、そんな中急にBちゃんが変なことを言い出したんです。「こっちに行く道なんてあったっけ? 行き止まりじゃなかった?」って。で、続いてCちゃんが「ここ通った方が近道じゃない?」って言い出して、具体的にどこのことをそう言ったのかわからないですけど、とにかく二人はいつも使う道とは別の道を使ったんですよね。  そのまま暫く歩いていると、急に霧が出てきたとか周りが見えないとか言い出して、その時点で止めれば良かったんです。でもその時の私はそこまで深刻に考えていなくて……  それから霧は晴れたみたいで、でも二人とも凄く戸惑っているようでした。変な所に出たって言うんです。廃村?みたいな。大きな梅の木がいっぱい生えていて、木の根元に大量の梅の実が落ちていて、それがすごい匂いで。でもそんなはずないんです。その時2月なんですから。真冬に梅の実がなるわけないんです。私もその様子が見たかったのでビデオ通話に切り替えてもらったんですけど、画面はずっと真っ黒なままで、見ることはできませんでした。Cちゃんが写真を撮ってくれていたので、後で見せてもらおうくらいに思っていました。  で、ふいにBちゃんが、梅のある家に人がいるって言い出して、二人してその家に入って行っちゃったんです。玄関の扉は開いていて、さっきまで誰かいたような気配がしていて、きっとここまだ人住んでるんじゃんって話していた時、急に女の子の声が聞こえてきたんです。電話口にはっきりと。「くさっちゃったんだよ」って。そこではじめてやばいと思って、二人にそこから出るように言ったんですけど、二人ともどんどん家の中に入っていくんですよ。普段そんなことするような子じゃないのに、キャッキャキャッキャはしゃぎながら、部屋の中を物色し始めちゃって。引き出しとか開ける音とか布が擦れるような音とか聞こえてきて。私は何度も何度も戻るように言ったんです。どれくらいそうしていたのかわかりません。ふいに、Bちゃんが「帰らなくちゃ」って言ったんです。ああ、やっと話を聞いてくれたかと思ったんですけど、それとほぼ同時にCちゃんの悲鳴が聞こえて、それからスマホに凄いノイズが走って、たぶんBちゃんがスマホを落としたんだと思います。ちょっと遠くの方でCちゃんのもがき苦しむような声に混ざってBちゃんが「帰らなくちゃ」「帰らなくちゃ」って繰り返し言っているのが聞こえてきて、でもそれもすぐに聞こえなくなって、何か水の音?みたいなのが聞こえてきて、ざぶざぶっみたいな。そこで通話は切れちゃいました。何度も何度もかけ直しましたけど、電話が繋がることはなくて、私もう怖くて怖くてパニックになってしまって……  こんなこと話しても誰も信じてくれないことくらいわかってます。警察にも話しましたけど、たぶん信じてくれてないと思います。でも、誰かに聞いてほしかった。  毎晩のように、あの家を夢に見ます。梅の木の根元に腐った梅の実が落ちていて、それがすごい匂いで。そこに女の子がいるんです。どんどん近付いてくる。いや、私が近付いていってるんです。おかしいじゃないですか。そんなことしたくないのに。あの子誰なんですか。絶対あそこで何かがあったんだ……私このままどうなっちゃうんですか。
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