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―――  国の商船を狙って金品を略奪するために度々海賊行為をおこなう敵国ルダスを討伐するために、ユセフ王子の指揮のもと軍を率いて侵攻することが決まっている。王様がユセフ王子に託したことで、ユセフ王子に(シャー)としての資質が備わっているかを見るためだろうと、王子は気概に満ちていた。私も当然、側近として従軍する。  遠征となると長期間帰れない。ユセフ王子は別れを惜しむかのように毎晩アーディルを寝所に呼び、不安と疲弊した心を彼に癒してもらっているようだった。  軍の士気を上げつつも若干の憂いを拭いきれずに、いよいよ出陣を翌日に控えた日のことだった。いつものようにユセフ王子と夜を過ごしたアーディルを、ハレムの入口まで送っていった。アーディルは沈んだ顔で、けれどもどこか嬉しそうに唇を噛み締めていた。そして「御相談があるのですが」と足を止めた。 「私に?」 「はい。あの……実は昨夜、ユセフ王子に無事に凱旋したら正妻になって欲しいと言われて。でも僕は元々王様の側妻で発情期もなくなってしまったし、ユセフ王子の正妻にしていただいても王子の御子を授かれるかどうかも分かりません。僕なんかで本当にいいのか……」 「ユセフ王子にはなんと?」 「帰ってから返事を聞かせてくれ、と言われたので、まだなんとも……」
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