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―――  凱旋を誓って礼拝堂で祈りを捧げたあと、我々は軍旗を掲げて予定通りに出陣した。  ユセフ王子の指揮で敵国の湾岸を艦隊で包囲し、城塞への攻撃は陸上から私の指揮でおこなった。ベータの私が指揮を取るなんて、とアルファの重臣たちからは反発されたが、ユセフ王子から直々に指揮を取るよう下命を受けたことだった。  実際、中盤までは優勢だった。途中上陸した島では鍛え抜かれた騎兵部隊が敵騎兵を打ち負かし、最終目標であるルダスの城塞では歩兵部隊の強襲により一部の砦を早々に占領できた。  けれども敵国の城塞が想像以上に屈強だったのと、敵の援軍の数が多く、なかなかすべてを攻め落とすことができないままじょじょに軍の士気が下がっていった。  出陣からおよそ半年が過ぎた頃だった。海軍司令官とともに海上から指揮を取っていたユセフ王子の軍艦が砲撃された。ユセフ王子を乗せた艦は黒煙を上げながら海に沈み、指揮官を失った我々は撤退を余儀なくされたのだった。  作戦上、私はその時に限って王子の傍にいられず、沈みゆく艦を陸から見ていることしかできなかった。直後に私も襲撃に遭い、激烈な白兵戦の末、私自身も重傷を負ったためユセフ王子の安否すら確認できないまま護送されることになった。  目を覚ました時、私は王宮で手当てを受けていた。王宮直前で意識を失って、三日ほど眠っていたらしかった。ユセフ王子は遺体も見つからないまま還らぬ人となり、遠征は失敗に終わったのだった。  
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