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「僕はよく少年に見られます。なのでカシム様のような精悍なお顔立ちが羨ましいです」 「お互い、ないものねだりだな」  アーディルは白い歯を見せて、にこりと笑った。気を緩めたような柔らかい表情を、私はこの時初めて見たのだった。 「それにカシム様の褐色肌も健康的で羨ましいです。僕は色が白いせいか弱そうにみられるみたいで」 「病弱にみられるということか?」 「はい。すごく身体に気を遣って下さるユセフ王子に時々申し訳なくて」 「分かった。アーディルは王子の厚意が迷惑らしいと伝えておこう」 もちろん冗談であるが、「そういう意味じゃない」と慌てる姿が可笑しかった。 「ユセフ王子は心がお優しいだけだ。別にきみを病弱だと思って甘やかしているのではない。それにユセフ王子の肌も雪のようだが、病弱には見えまい」 「確かに」  今度は上目で、悪戯っ子のような含み笑いをする。今日はよく表情が変わる。少しは私に対して警戒心がなくなったということだろうか。  ハレムの入口に到着して、アーディルは私に向き直ると膝を曲げて丁寧にお辞儀をした。 「この宮殿に来られて本当に良かった。カシム様、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします」    礼なら私ではなくユセフ王子に、と返して、私は支度を済ませたであろう王子の元へ引き返した。
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