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パーフェクトドクター
「OK、久美さん。顔面神経刺激装置を」
「はい絵里先生」
器械出しの久美さんが私の指示を予想していた様に迅速に顔面神経刺激装置を渡してくれる。
私が執刀している十七歳の女性患者『高倉綾さん』は、脳腫瘍の所為で寝たきりとなってしまい、呼吸も人工呼吸器に頼っているから話す事も出来ない。
「こんな若い子が……絶対に治してあげないと」
彼女の腫瘍は脳幹に出来た静脈性血管腫。この血管腫が巨大化し、呼吸や運動機能を司る脳幹を圧迫しているんだ。
彼女の後頭部からアプローチし、見えて来た脳幹表面を刺激装置を当てて切開可能なエリアを見極める。そして黄変色している部分から脳幹表面を切開していく。
「これが血管腫ね。和美さん、血圧を少し下げて」
「はい、絵里先生。もうやってます」
麻酔科医の和美さんとの呼吸もピッタリだ。
「恵美さん、15のバイポーラを」
血管腫をバイポーラで破りながら止血していく。そうすると静脈性血管腫の本体が見えて来た。
「脳幹に癒着しているのね。でも私なら……」
癒着している血管腫を無理に剥がすと、脳幹を傷付けて大きな後遺症が残ってしまう。私は脳幹との境界の癒着を丁寧に剥ぎながら、静脈性血管腫を脳幹から切り離していった。そして血管腫を一気に取り出した。
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