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「空鈴って、本当に効き目あるのかしら?」
授与所で木札を整理していた宮司が、私の声に反応して顔をあげた。
「そりゃあもう。この神社の神様はいつだってやる気満々ですからね」
「貰った人が別の子にあげちゃったら?」
「それは......」
作業の手を止めた宮司は、祭神に伺うように本殿のほうを見つめる。
「鈴ですから、自然とね。贈り主の運命の相手のところへ転がり込むんですよ。そうしたらあとは引き寄せてくれます、運命のふたりを」
それを聞いて安心した。先の短い私の、細やかな願いが叶うかもしれないのだ。
「なあ茜ばあちゃん?暗くなってきたし、そろそろ帰るぞ?」
しっかり者の孫が後ろから覗き込んできたので、私は目の前に並んだ雛の空鈴を1つ掴んで振り返る。
「ねえ?この鈴が気に入っちゃった。プレゼントしてくれないかしら?」
ねえ?頼んだわよ?
可愛くて頑張り屋で繊細な、あの子をね。
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