3,変化

9/25
前へ
/212ページ
次へ
  ドサリ、と。 派手に転ぶ物音が屋上に響いた。 「キャッ! な、なに?!」 慌てふためく彼女の上擦った声。 やって、しまった……。 「まさか覗き見してる女がいるなんて思わなかったな?」 頭上からの人影が視界に入り、顔を上げられない。 心臓はドクドクと異様な速度で脈打ち、背中には嫌な冷や汗が滲んでいた。 「君、もう帰っていいよ」 「え? あ、あの……」 「早く帰れよ。ヤル気が失せたって言ってるのが分かんない?」 「……っ! 帰る……わ」 容赦ない冷たい声。 喉から絞り出したような彼女の声は涙混じりで。 足早に去っていく足音が私の体を横切ると、屋上は途端にしんと静まり返った。  
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加