本当の家族に

11/12
前へ
/82ページ
次へ
「……愛してるよ」 「私も……愛してます」  夢みたい。  やっと新さんと……最後まで……  恍惚とした余韻に浸りながら、彼に身を預ける。  胸に顔を埋めて、「ありがとう」とお礼を呟いた。 「俺の方こそ」  ぎゅっと抱き締めてくれる温かさが心地良くて、守られている安心感にホッとする。  今日一日のことで、もっと彼への愛情と信頼が深まった。  一緒にいるとこれ以上ないくらい楽しくて、安心して。  触れられることが心底嬉しい。  どうかこのまま、ずっと傍にいられたら。 「……家族になりたい」  抑えきれなくなった思いがつい言葉に変わる。 「新さんと、本当の家族になりたいです」  そう伝えてしまってから、すぐに我に返り後悔した。  まるで結婚をせがんでいるみたいだ。  付き合ってまだ数ヶ月で、一度ひとつになれたからって何重いこと言ってるの。  こんなんじゃいくら新さんでも困惑してしまう。 「……ごめんなさい。今のは、」 「それ、死ぬほど嬉しいんだけど」 「え?」  涙目になって微笑む彼にびっくりして、目を見開いた。  彼は起き上がり、脱ぎ捨ててあったズボンのポケットから何かを取り出すと、私にそれを見せた。 「これっ……」  手のひらの上の小さな箱の中身は、今日一緒に見ていたダイヤモンドのエンゲージリングだった。 「……ごめん。やっぱりどうしてもお返しあげたくて」  真っ赤になる新さんに、再び堰を切ったように涙が溢れた。 「結婚しよう、光花」 「そんな……」  揺るぎなく微笑み、私の左手の薬指にリングをはめてくれる。 「お、良かった。ぴったりだ」  安堵するような声。  薬指に輝く光に目を奪われ、呆然と見つめた。 「……ほんと……に?」 「本当に」 「後悔しない?」 「するわけないだろ」  私の溢れる涙を指で拭って、優しい笑みを浮かべる。 「もう光花の居ない暮らしなんて考えられない」  声にならない声で、「私も」と頷く。  胸に押し寄せてくる幸福が涙に変わって、ひっきりなしに流れた。  今なら思える。  生まれてきて良かったと。  両親に心から感謝することもできた。  それも全て新さんのおかげで。  彼は私の、過去も今も、未来まで照らしてくれるんだ。 「……流れ星にお礼言わないと」  そんな可愛らしいことを言ってしまう彼が愛しくて仕方ない。 「私も、お礼言わないと」  指を絡めて、ふっと微笑み合う。 「願い、叶ったね」 「……叶った」  夏の夜の奇跡。  きっとどんなに月日が流れても、あの日の流れ星を忘れることはないだろう。  
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3487人が本棚に入れています
本棚に追加