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「……あの……、どうして課長は私のことを……」
根本的な疑問を、ついに恐る恐る聞いてみた。
全く見当がつかない。
こんな平凡で取り柄のないやつ、課長が好きになるはずないのに。
「きっかけは……これだ」
課長がテーブルに出した一冊の雑誌。
「……月刊星占い?」
……まさかのスピリチュアル。
「半年くらい前、ここに書いてあった。忘れもしない。“乙女座のあなた。運命の人に出会うチャンス! 笑顔が素敵な人がキーパーソン”だと」
「それって……」
めちゃくちゃ適当じゃない。
誰でも当てはまりそうな文言だ。
口が裂けても課長には言えないけど。
「俺が知っている中で、お前の笑顔が一番輝いていた」
「そんな理由で!?」
そんな理由?と、課長がムッとする。
どうやら本気みたいだ。
課長、どうしてそうロマンチックなんですか!
乙女座だけに、めちゃくちゃ乙女チック!
「そっから気になって目で追うようになって。いろんな表情を見ているうちに…………守ってやりたいと思うようになった」
真っ赤になる課長が愛らしい。
正直言って嬉しかった。
こんなふうに、異性から想ってもらえるのは生まれて初めてのこと。
くすぐったくて、心がじんわり熱を帯びて、心地良い。
……だけど。
「……ありがとうございます。そんなふうに想っていただけて光栄です。身に余るほど。……だけど、……ごめんなさい」
課長に向かって深々と頭を下げる。
そして、全てを話す覚悟を決めた。
今まで誰にも話すことがなかった過去について。
課長も照れながら全てを話してくれたんだから、自分も開示することが礼儀だと思った。
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