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「この部屋を使ってくれ。今は殺風景だけど、欲しいものはなんでも買ってやるから」
日当たりの良い部屋に、大きめのベッドと観葉植物。
ここは今朝目覚めた時にいた課長の寝室だ。
「これ、課長のベッドじゃ」
「ああ、カバーとかは新しいものにするから」
「そういうことじゃ、」
「安心しろ。俺は書斎の方で寝るから」
「そういうことじゃ!」
課長の部屋をとるなんて申し訳なさすぎる。
ただでさえ居候するなんて迷惑なのに。
「あの、私はその辺の床で寝ますから」
「何言ってるんだ。そんなわけにはいかないだろう。お前がその辺で転がってたらいろんな意味で俺の心臓がもたない」
「課長……」
課長は私の遠慮を察してか、優しく笑った。
「大丈夫だ。書斎で調べものがあったから、ちょうどよかった」
なんて優しいの。
鬼軍曹の欠片もない。
「それより、休みのうちに必要なものを買い揃えておきたいんだが、今から出られるか?」
「だ、大丈夫ですけど、本当にお構いなく」
お世話になるのは強盗が捕まるまでの、数日間だし。
「二人で出かけるなんて楽しみだな。二人で」
物凄く嬉しそうな笑顔なので、行かなくていいとは言えなかった。
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