共同生活の始まり

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「見てください、このマグカップ」 「おー、茶トラ猫柄」 「可愛い」 「可愛い」  新さんとは趣味や好みが似ているのか、一緒に買い物をするのはとても楽しい。  私が「いいな」と思うものは、ほとんど同じように彼も「いいな」と目を細めてくれる。 「これも買うか」  意気揚々とマグカップをカゴの中に入れる新さん。  カゴには既にたくさんの食器や雑貨が入っている。 「そんなにたくさん! もう大丈夫ですよ!」 「遠慮はなしだって言っただろ?」 「遠慮じゃなくて……」  数日間お世話になるにしては潤いすぎているような。 「入浴剤も買うか」 「いいです……ね」  バスボムを吟味している新さんを見て現実を思い出したかのように我に返った。  一緒に住むということは、一つ屋根の下でお風呂にも入るということ。  そう言えばヨレヨレのパジャマしか持ってない。 「……あの、新さん。パジャマを買いたいんですが……」 「パジャマ!?」  突然真っ赤になる彼に、私もつられて顔が熱くなる。 「わ、わかった。買おう、パジャマ」 「なんでそんなにカクカクしてるんですか?」  雑貨類を購入した後、モールの同じフロアにある女性向けのルームウェアコーナーに立ち寄る。  可愛らしいフワフワしたものや、なかなか際どいものもあったりして、私達は絶句した。  特に新さんの挙動不審具合が尋常じゃない。 「想像してないから! 全然想像してないから!」 「わわわかってます!」  二人で何故か慌てながら、一番無難なボーダーのパジャマを発掘。  すると、お会計をしてくれた店員さんがニヤニヤとして言った。 「新婚さんですかー?」 「な!」 「はい、そうなんです」 「課長!」  デレデレした顔でカードを出す彼に、何も言えなかった。  上司にここまでさせて、私は何をやっているんだろう。 「よかったら奥様のインナーウェアも選んであげませんか? ご主人」 「………………」  絶句してその後ふらっと目眩を起こす新さんを、慌てて現世に繋ぎ止めた。  
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