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____株式会社有村フーズ。
レトルト食品を中心とした、様々な商品を展開する食品メーカー。
東京にある本社ビルの6階は、今日も張り詰めた緊張感が漂う。
「このプレゼンじゃ通せない」
営業部である私の職場は、いつだってピリピリしている。
「オリジナリティや斬新さがまるでない。味気なくて退屈だ。これじゃ人の心は掴めない。悪いけど全部やり直して」
原因はたった一つ。
いや、一人。
冷徹な上司として有名な、香月課長のせいだ。
言っていることは至極真っ当だけど、淡々とした口調や冷めた表情のせいで近寄りがたいオーラを醸し出ている。
31歳にして課長に抜擢されたエリートで、シャープな顔立ちは韓流アイドルにいそうなほど美しいから、密かにファンは多いみたいだけど。
その冷徹なオーラのせいで気安く声をかけられる女性社員は少ない。
かく言う私も、彼のことを内心憧憬の眼差しで見ていた。
仕事ぶりは超がつくほど丁寧で早く完璧だし、誰よりも熱心で。
何より、会社や商品への愛が感じられるから。
同じく商品への愛だけは誰にも負けないと自負している私にとって、彼は尊敬する上司だ。
「マメダイスーパーさん、行ってきます!」
「おい。……星山、ちょっと待て」
課長に呼び止められ、振り向くと。
「ちょっといいか」
そう声をかけ私の肩に触れる。
「肩に埃ついてる」
スマートに埃をとってくれた課長に、不意打ちでドキッと胸が高鳴った。
休憩中、書庫で昔の商品の資料を読み漁っていた時に埃がついたんだ。
「……勉強熱心なのはいいが、休憩時間はちゃんと休むように」
「はい……すみません!」
そんなことまでバレているとは。
恐るべし香月課長。
「……営業は身だしなみから」
「肝に銘じます!」
「……軍隊かよ」
周りの社員に冷ややかに見つめられながら、課長に頭を下げフロアを出た。
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