共同生活の始まり

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「餃子、絶品でしたね!」 「まずまずだな」  課長の餃子は、有村フーズのものと同じくらい、いや、それ以上に美味しかった。  二人でビールを飲んで餃子を鱈腹食べて。  楽しくて心地良い時間は、あっという間に過ぎていく。 「そろそろ風呂入るか」  なんてことのないような彼の声に、身体が強張った。  さっきのパジャマを着るの、なんとなく恥ずかしい。  それに、やっぱり意識してしまって。 「さ、先に入ってください」  私は新さんが眠ってから入ろう。 「そうか?」  特に不審がることもなく、お風呂の準備を始める新さん。  それはそれで、ちょっとドキドキした。  課長の入浴シーンを想像し、慌ててかき消す私。 「じゃあ、悪いな。お先に」  着替えなどを手にして、お風呂場へ向かう新さんに笑って誤魔化し会釈する。  さっきから何を意識しているの。  家族なら、お風呂や就寝に遭遇したって当たり前のこと。  早く慣れないと。 「あれ……」  ふと、テーブルの上に今日買ったバスボムが置かれていることに気づいた。  新さん、これを入れるの楽しみにしていたのでは? 「まだ脱いでないよね?」  今なら間に合うかもしれない。 「新さん、入浴剤……」  ……そう思ったのがまずかった。  ノックしてドアを開けた瞬間。 「え……」  頭の先からつま先まで、まじまじと彼を見つめフリーズする。  彼は既に一糸纏わぬ姿で、艶めかしい肌を露わにさせていた。 「ご、……ごめんなさい」  …………脱ぐの早すぎる。 「いや…………大丈夫です」  彼の敬語に、動揺が滲み出ていた。 「……にゅ、入浴剤を」 「……あ、ああ。ありがとう」  彼に入浴剤を手渡して、最敬礼して脱衣所から飛び出る。  あまりにもびっくりして、もう叫ぶ余裕もなかった。 「………………」  ……………………見てしまった。  ハッキリ全部。  お父さんのものだって、見たことなかったのに。  両手で顔を覆って、へなへなと脱衣所のドアを背もたれに座り込む。 「…………やらかした」  共同生活一日目は、最後の最後に刺激的な記憶だけが、脳内に焼きつけられる結果に終わってしまったのだった。 「…………すごかった……」  しばらく頭から離れそうにない。
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