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____『○○区のマンションで起きた強盗事件、容疑者が今日未明に逮捕されました』
そんなニュースを聞いたのは、それからすぐのこと。
いつものように二人で朝食を食べている時だった。
テレビから流れる、淡々とした女性キャスターの声に、箸が止まる。
「……捕まって良かったな」
何気ないことのように言う新さんとは反して、内心私は冷や汗が止まらなかった。
捕まって良かったのは、その通りなんだけど。
……もう、アパートに帰った方がいいよね。
お世話になってもう二週間。
これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「……課長、私」
「今日の夕飯、昨日のカレーの残りでカレーうどんなんてどうだ?」
「……え?」
なんてことのないように笑う新さん。
「光花、麺類も好きだろ?」
「は、はい……」
切り出すタイミングを失ってしまった。
……違う。ホッとしている自分がいる。
まだここに居ていいのだと。
「た、楽しみです」
せめてあと少しだけ。
今夜だけでも。
狡い私は、そのまま出て行く話を濁してしまうのだった。
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