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「ハピネスチキン、売れ行きはどうでしょうか?」
「ええ。順調よ」
お得意様のスーパーで、有村フーズ一押しの商品の売れ行きの確認。
更に販促グッズの「ハピネス注入します」と書かれたポスターや団扇を配る。
「星ちゃん、いつも熱心ね」
店長さんにも名前を覚えてもらえるようになって、手応えを感じ満面の笑みで頭を下げる。
「ありがとうございます! また伺います」
今日はたくさん回るぞ。
あの淡々とした香月課長がびっくりするくらい。
____「ママー! ハピネスチキン食べたい!」
「もうー。しょうがないわね」
近くを通りかかった、小さな女の子とお母さん。
仲睦まじく買い物している姿を眺め顔が綻んだ。
ちょっぴり切なくなったりも。
「はい、どうぞ。ハピネス注入しまーす!」
女の子にハピネスチキンの団扇を差し出すと、嬉しそうに声を上げ笑ってくれる。
「ありがとう!」
「よかったわね」
微笑み合う二人の姿に温かな食卓を思い浮かべ、幸せな気持ちに浸った。
「ハピネスチキン、お買い上げありがとうございます! ご賞味ください!」
私が有村フーズのファンになったのは、もう小学生の時からだ。
ほとんどいつも一人きりだった食卓に、唯一温かな美味しさを与えてくれた存在。
親の手料理をほとんど覚えていない私にとっては、この会社の商品がおふくろの味のようなもの。
そんな会社で働けるのは、取り柄のない私にとって誇りであり、唯一の救いだった。
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