流れ星に願い事を

3/4
前へ
/82ページ
次へ
「ハピネスチキン、売れ行きはどうでしょうか?」 「ええ。順調よ」  お得意様のスーパーで、有村フーズ一押しの商品の売れ行きの確認。  更に販促グッズの「ハピネス注入します」と書かれたポスターや団扇を配る。 「星ちゃん、いつも熱心ね」  店長さんにも名前を覚えてもらえるようになって、手応えを感じ満面の笑みで頭を下げる。 「ありがとうございます! また伺います」  今日はたくさん回るぞ。  あの淡々とした香月課長がびっくりするくらい。 ____「ママー! ハピネスチキン食べたい!」 「もうー。しょうがないわね」  近くを通りかかった、小さな女の子とお母さん。  仲睦まじく買い物している姿を眺め顔が綻んだ。  ちょっぴり切なくなったりも。 「はい、どうぞ。ハピネス注入しまーす!」  女の子にハピネスチキンの団扇を差し出すと、嬉しそうに声を上げ笑ってくれる。 「ありがとう!」 「よかったわね」  微笑み合う二人の姿に温かな食卓を思い浮かべ、幸せな気持ちに浸った。 「ハピネスチキン、お買い上げありがとうございます! ご賞味ください!」  私が有村フーズのファンになったのは、もう小学生の時からだ。  ほとんどいつも一人きりだった食卓に、唯一温かな美味しさを与えてくれた存在。  親の手料理をほとんど覚えていない私にとっては、この会社の商品がおふくろの味のようなもの。  そんな会社で働けるのは、取り柄のない私にとって誇りであり、唯一の救いだった。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3488人が本棚に入れています
本棚に追加