何、願ってくれちゃってるんですか

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 それから実際に声が出たのは、数十秒後のことだった。  課長が私の髪をもったいぶるように撫でた瞬間だ。 「ぎゃー!!」  自分の声に鼓膜が破れそうになる。  そこでやっと彼から解放されて、勢いよく飛び起きた。 「ななななななんなんですか! なんで!? ここはどこ!?」  まさにここはどこ、私は誰状態の私を、課長はまだ眠たげな目で見つめる。 「俺んちだ」  そして当たり前のようにポツリと呟いたのだった。 「なななななんで!? なんで課長の家に!?」  昨日、課長に会った覚えもない。夜一緒に飲んだわけでもないし、ましてそういう関係になった記憶も……。  パッと自分の姿を確認する。  昨日着ていた服のままで、胸を撫で下ろした。  だけどまだ油断してはならない。  訝しがる私に対して、至って冷静で平常運転の課長。 「落ち着け。何もしていない」  潔白を示すかのように両手を挙げる課長。 「だったらなんでこんなことに……」  途端に彼は目を泳がせる。 「課長……?」  怪しい。怪しすぎる。 「……心当たりならある」  驚愕の言葉にゴクリと固唾を飲み込んだ。 「……なんですか?」 「………………」 「………………」 「………………」 「何何何ー!? 言ってー!」  突然真っ赤になる課長に絶句した。  こんな課長を見るのは初めてで。 「……流れ星」 「……流れ星?」  そう言えば、私も昨日見た。  ほんの一瞬、夜空に光る流れ星を。 「…………流れ星に、お前のことを願った」 「私の!?」  全く見当がつかない彼の発言に、脳みそはパンク寸前。  しかしトドメをさすように、彼は再び口を開いた。  ……至極、恥ずかしそうにして。 「……お前と、一緒に暮らせますようにって」 「え?」  ………………? 「……何故?」  課長は狂ってしまったのか。
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